29周年の立役者! 東映ビデオ担当者「『キン肉マン』の仕事の上で大切なのは“遊び心”だとゆでたまご先生から学びました!」

6月14日まで開催されていた「連載40周年記念 キン肉マン×集英社大展示会!!の巻」の前にて。東映ビデオの小田元浩氏と。

今年40周年の記念年で大きな盛り上がりを見せている『キン肉マン』だが、今を遡ること11年前の2008年、“ニク”で29周年ということで今年同様、様々なイベントや商品企画が登場し、大きな盛り上がりを見せていた。

なかでもその目玉として注目されたのが、これまでのアニメ全シリーズを収録し、かつ伝説のキンケシ全418体がオマケで付いてくるという究極の「コンプリートDVD-BOX」! 当時中心になってその企画を立案した東映ビデオ担当・小田氏にあれから11年たった40周年の今、改めてお話を伺ってみた。

まずは、小田さんの所属されている東映ビデオのコンテンツ部さんの基本的なお仕事内容についてご説明ください。

小田ざっくりとしたところでいうとDVD、ブルーレイの新商品企画を作る部署になります。新作、旧作にかかわらずどういう映像コンテンツを収録して、どんな特典をつけて、どのようなパッケージングで販売するか、というのを考えて、その実現に向けて動いていくのが主な仕事内容ということになります。

東映ビデオさんの近年の『キン肉マン』商品の中で、特に目立つのは今から11年前、29周年記念で発売された「コンプリートDVD-BOX」です。これはアニメの初期シリーズ&王位争奪編の全話、TVスペシャル編、劇場版全7作を完全収録したうえに、極め付きの豪華特典としてキンケシ初期シリーズ全418体がコンプリートで付いてくるという夢のようなパッケージングのまさに完全版。

値段としてはかなり高価でしたが、結果的には大ヒット商品になりました。これも小田さんがかなり中心になって動かれていた企画でしたよね?

小田当時、私は今のコンテンツ部ではなく宣伝部という部署にいて、収支の面に関しては別の部の者が担当してたんですが、特典やパッケージングに関しては私の方で企画を立てて進めさせてもらいました。

じゃあキンケシを全種つけようという大胆な発案も?

小田はい、私ですね。この商品に関しての最大のポイントはまさにそこでした。

当時、最初にその話を耳にした関係者の誰もが「そんな特典、本当に実現できるのか?」という感想だったと聞きます。

小田まさにおっしゃる通りで「これはどこまで本気なのか?」って誰もが思うような企画だったと自分でも思いますが、キンケシ418体を復刻してしかもオマケで付けるなんて、こんな良い意味でバカげたことをぶちあげるのが宣伝部としてはニュースになると思ったんです。正直、その花火一発に全てを込めて告知できればそれでいいと思ってました。

まさにインパクトは絶大でした。でもそれは提案するだけでも相応の覚悟が必要だったんじゃないですか? よく言ったなという意見も多かったと思います。

小田だけど、そもそもこの企画のきっかけ自体が“29周年”というくくりなんですよね。普通なら30周年ですよ。でもそうじゃなくて“ニク”で“29周年”を盛り上げたいというのは、ゆでたまご先生からのアイデアでありご希望だったと思うんですが、既にそこに遊び心があるじゃないですか。だから掴みはそれでOKなんですよ。そんな遊び心にあふれた周年企画だからこそ、普通じゃないことでも通るような気がしたんです。

『キン肉マン』の周年は“29”年目が大切と気づいた!

でも、その後通ったのはよしとして、その実現までの具体的な工程を考えると課題も満載だったと思います。キンケシ発売元のバンダイさん含め、相当大変な難作業だったと思いますが?

小田キンケシ418体に関しては、金型も何もないところからの復刻作業でしたからね。バンダイの担当さんですら最初に話をもちかけた際は冗談だと思ってましたから(笑)。でも本気でやるぞということになって…。結局、金型は昔の現物の保存状態の良いものから取り直して、全て新たに生産していくという手順で進めていきました。418体、順番に。

ものすごくお金もかかったと思うんですが…?

小田かかりましたね。詳しくは言えないですけど原価率を見ると本体であるはずのDVDと特典であるはずのキンケシの比率がおかしなことになってて(笑)。でもおかげで周年企画の一環としての話題作りには成功したし、損しなきゃいいかということで半ば強引に推し進めていきましたね。結果的にはかなり売れてくれまして、助かりました。

その際の宣伝活動の一環として、山手線の全29駅にそれぞれ違う超人のポスターが貼られるという企画がありましたが、あれも印象的でした。ゆでたまご先生も「山手線が全部で29駅って、小田さんに聞いて初めて知りました」と今でもよくお話されます。

小田それも“29周年”の遊び心の一環でしたよね。とにかくあの年のプロモーション企画に関しては「ただビジネスというんじゃなくみんなで面白いことをしましょう」というのが、ゆでたまご先生からの大号令でもありましたから。

それでひとつの宣伝のために29種類ものポスターを作るという、またお金のかかることをやったんですよね(笑)。効率を考えたらもっと他にやり方はあるだろうという意見もありましたけど、そうして今でも先生に語り草にしていただけているんなら、それはそれでよかったかとも思います。

山手線が奇跡の29駅! いろいろな奇跡がハマったのです

そういえば、今もずっと続いている、日本記念日協会認定の「キン肉マンの日」(毎年29日と金曜日が重なる日に制定)という記念日も、もとをたどればその際のプロモーション企画の一環として出てきた案でしたよね?

小田小田 その年はちょうど、2月29日という4年に1回の珍しい日が金曜日だったんです。前年の秋頃だったと思うんですけど、その事実に最初に気づいたのは東映アニメーションの当時のDVD担当の小林さんという方 で、ある日その小林さんから「小田さん、神が降りてきました!」ってすごいテンションで電話がかかってきまして(笑)。

何事かと聞いてみたら「キン曜日と29日が重なってるんですよ、こんな奇蹟ないですよ!」みたいな話になって盛り上がって。それでその日に併せてDVD-BOXの予約キャンペーンも兼ねて「キン肉マン映画祭」というイベントを、新宿の映画館を借りて開催することになったんです。

たしか新宿のバルト9でしたよね?

小田はい、そうです。それで集英社や東映アニメーションを含めたプロジェクトチームの総意として「29日の金曜日は記念日として登録しましょうか」 という流れになって、日本記念日協会に申請してみたら通ったんですね。それでゆでたまご先生もお招きして、そのイベントの中で同日に記念日認定式をやったんです。その08年2月29日の金曜日が第1回「キン肉マンの日」になりました。

今でも毎年、その日が巡って来るたびに何かしらのイベントをやるというのが暗黙の了解になってる感があります。

小田私もクセで今でも毎年カレンダー見るたびに「今年はキン肉マンの日が何回あるな」って、ついチェックしてしまいますね(笑)。

今やおなじみの“29日金曜日は「キン肉マンの日」”!もこのとき制定されました

これまでそんな様々な仕掛けを企画されてきた小田さんですが、今年はその29周年から早くも11年が過ぎまして、キン肉マン40周年です。東映ビデオさんからも『キン肉マン』40周年に際しての告知がおありでしたらここでぜひ。

小田はい。もうしばらく先になりますが11月29日の金曜日、まさに「キン肉マンの日」なんですけど「『キン肉マン』一挙見ブルーレイ」というのを3枚同時に発売させていただくことになりました。初期アニメシリーズの中から「7人の悪魔超人編」「黄金のマスク編」「夢の超人タッグ編」をそれぞれ全て抜粋して、各1枚に収めたという商品になってます。

ではせっかくですからこの商品企画を立てられた小田さんから、直々に商品のセールスポイントをご説明いただけますか?

小田そうですね(笑)。『キン肉マン』ってゆでたまご先生が『週刊少年ジャンプ』で連載されていた頃からそうだと思うんですが、次の話が気になるように気になるように、各話ラストのヒキを大切にされていた作品だと思うんです。

でもアニメの場合、これまでのDVDでは容量の関係で何話か見ると必ず途中でディスク替えをしなきゃいけないという手間があって、私自身もそれが少し煩わしいというのは正直、感じていたんですね。

それが、ブルーレイの大容量の特性を活かすと、キリのいいところまでまとめて11枚で全て収まる。だから「よーし今夜は『キン肉マン』見るぞ」と思ったら、一切のストレスなく最初から最後まで一挙に見られる!…というのが今回の商品の一番の特徴になります。

なるほど、11月29日(金)の「キン肉マンの日」ですね。リリースが今から楽しみです。本日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました!

●11月29日(金)「キン肉マンの日」に一挙発売!

『キン肉マン一挙見ブルーレイ 7人の悪魔超人編』(#48-65/全18話) 9000円(税抜き)
『キン肉マン一挙見ブルーレイ 黄金のマスク編』(#66-86/全21話) 9000円(税抜き)
『キン肉マン一挙見ブルーレイ 夢の超人タッグ編』(#87-119/全33話)1万円(税抜き)
発売時期:2019年11月29日(金)
発売元:東映ビデオ/販売:東映

東映ビデオ 公式サイト『キン肉マン』ページ

(取材・文/山下貴弘 撮影/榊 智朗)