30年ぶりにキンケシを完全復活させたバンダイ担当者を直撃!「キン肉マンは世代を超えて楽しめるコンテンツなんだと」

80年代に大ブームを起こした“キンケシ”。それを、30年ぶりに復活させた内田さんに成功秘話を伺う!

現在、週プレNEWSで連載されている『キン肉マン』(毎週月曜日配信)の連載が『週刊少年ジャンプ』でスタートしたのは1979年。その4年後の83年に、現在まで続くキン肉マン人気を決定づける商品が誕生した。ご存知『キンケシ』だ。

キンケシは83年から発売されたレギュラー版だけでも1億8000万個以上を売り上げ、キン肉マンファンだけでなくカプセルトイ業界全体を代表する製品になったという。しかし、レギュラー版の販売は87年に終了。その後は、何度か限定版を発売するに留まっていた。

そんなキンケシは2016年より『キンケシプレミアム』シリーズとして『プレミアムバンダイ』からの受注販売がスタート。現在ではシリーズ10まで続く大ヒット商品になっている。さらに17年からはおなじみのガシャポンでの販売が開始され、待望のレギュラー版として大復活を遂げた。

キンケシを復活させる! その大偉業を成し遂げた男、それが株式会社バンダイ・内田健太郎氏(35歳)だ。彼にキンケシ復活への道のり、そしてキン肉マンに対する思いを聞いてみた。

もともとキン肉マンファンだったのですか?

内田アニメもマンガも、キン肉マンをリアルタイムで見ていた世代ではありませんでした。ただ、キンケシの存在は知っていて、従兄弟のお兄ちゃんからバケツ一杯分のキンケシをもらい、子供の頃はそれで遊んでいました。とはいえ、バンダイに入社してからも直接キンケシと関わることはありませんでした。

そんな内田さんがキンケシと関わるきっかけは?

内田2015年からカプセルトイの企画開発の仕事に関わり、そこでキン肉マン担当になったのです。当時は『ドラえもん』『ポケットモンスター』『妖怪ウォッチ』などを担当していましたが、まだキン肉マンの商品はほとんどなかったのです。

どうやら、「なんかキン肉マンの企画を考えろ!」という意味も込めてのキン肉マン担当だったみたいです(笑)。

キン肉マン担当となった内田さんが考えた商品とは?

内田当時のカプセルトイのトレンドは彩色済でカップ等のフチに飾るフィギュアやスマホのディスプレイスタンドにも使えるというちょっとした実用性のある商品でした。そのトレンドを考慮するとキンケシは無彩色で飾る以外に用途がありません。

そこで考えたのがキン肉マンの超人たちのマスクを再現したボトルキャップです。これは彩色済みでペットボトルのボトルキャップとして使え、もちろんそのまま飾っても楽しめます。

これは人気商品に?

内田スマッシュヒットでシリーズ3まで展開しました。ただ、マッスル濃度の高いキン肉マンファンには喜んでもらえませんでした。ライトなファンが買ってくれていたみたいです。

内田氏が手がけたキン肉マンのボトルキャップシリーズ。連載で5王子が活躍中の今こそ再販してほしいシリーズです!

それはどうして?

内田キン肉マンのグッズを展示販売するイベントがあり、そこへボトルキャップを出展しました。コアなキン肉マンファンはまったくボトルキャップに興味を持ってくれず、一緒に展示してあった歴代のキンケシばかりの写真を撮っていたのです。

逆にそれを見て「あれ、キンケシってまだまだ可能性あるな」と思いましたね。

イベントでキンケシへの手応えを感じた内田さんは、新たなるキンケシプロジェクトを企画する。それは83年にデビューしたキンケシを復活させることだった。

内田企画書を何度も出しましたけど、すべて却下です(笑)。やはり、現在のトレンドと真逆にある無彩色の商品はハードルが高かったです。カプセルトイ業界は一度失速すると、シリーズ継続どころか、そのキャラクターでの商品化もできなくなるくらいシビアな世界ですので、会社はなかなかゴーサインを出してくれませんでした。

そこで企画したのが15体セットのキンケシプレミアムシリーズです。初代のキンケシで造型を担当した廣田圭司(けいじ)氏のご子息・廣田敬厚(ひろあつ)氏が造型監修を担当し、デザインも当時のキンケシを彷彿させるものになっています。

この形で、まずはチャレンジしてみようと、会社もついにゴーサインを出してくれました。

内田さんの手がけた『キンケシプレミアム』シリーズ。こちらも内田さんが担当した。現在はシリーズ10まで続く人気商品となっている

こちらの売れ行きは?

内田想像以上の売れ行きでした! ただ、開発は大変でしたね。社内的にもキンケシで遊んでいた世代は私よりずっと年上でキンケシへの熱量がすごい! ラインナップを決めるだけでも「なんでこの超人が入ってないんだ! これ違うでしょ!!」と何度もダメ出しをされました。それもまったく部署の違う先輩からです(笑)。

そのなかでも、昔キンケシに携わっていた、面識のない大先輩たちから「キンケシやってるんだって?」と声をかけてもらえたのがうれしかったです。

これまで担当したキャラクターとはまったく違うと?

内田そうですね。仕事の打ち合わせだったはずが、いつのまにかキン肉マン談義へ発展するんです。僕はキン肉マン世代ではなかったのでデザイナーさんと打ち合わせしているだけでも、「おまえに何がわかるんだ!」と技や名シーンについて濃厚な解説がはじまるんです(笑)。

社内だけでなく版権元の東映アニメーションの担当さんも「人気超人や新章の超人がありつつ、カレクックを入れてハズしも加える。これがキン肉マンらしいんですよ!」と細かくて濃いアドバイスをたくさん頂きました。

社内でも社外でも、キンケシ担当をやりはじめて間違いなくコミュニケーションの幅が広がり、キン肉マンは世代を超えて楽しめるコンテンツなんだと実感できました。

キンケシプレミアムシリーズの大ヒット。内田さんの次なる目標はガシャポンでのキンケシ復活だった。

内田キンケシはカプセルトイ業界にとって本当に大切なものなのです。それこそ、現在キンケシの製造を担当しているメーカーさんは、初代のキンケシも製造していました。そんなメーカーの人たちが「キンケシがあったからこそ、今のうち(会社)がある!」と言ってくれました。

そういった言葉をかけられると使命感が出て「絶対にガシャポンで復活したい!」という思いが強くなりましたね。幸いキンケシプレミアムの販売が好調でガシャポンでの販売も会議でOKしてもらえました。

キン肉マンファンからの反応は?

内田キン肉マンのファンは優しいんですよ。通常のコンテンツですと新商品の発売直後に「なんで、このキャラがラインナップされてないの!」という意見がSNS上でみられたりするのですが、キン肉マンの場合はほとんどありません。

現在、キンケシプレミアムはシリーズ10、ガシャポンのキンケシもシリーズ13まで続いています。アニメを放送していないのにここまでシリーズが続くのは異例のことです。本当にファンから愛されているのが実感できますね。

でも、一番キンケシを愛してくれているのは、ゆでたまごの嶋田隆司先生です。先生はインスタでまったくキンケシと関係のないネタでも【#kinkeshi】と入れてくれてますから(笑)。

昨年発売された『キン肉マンジャンプ』の裏表紙には内田さんからキン肉マンファンへ長文の感謝のメッセージが掲載された

最後にキンケシを愛してやまないファンへメッセージをお願いします。

内田現在、私はキンケシの担当を離れていますが、後輩たちがいろいろな仕掛けや企画を考えながらシリーズを続けています。ファンの皆さまが「スゲェーッ!」となるような商品を、今後も期待しててください!

キン肉マン キンケシ公式サイト

プレミアムバンダイ ガシャデパ公式サイト

(取材・文/直井裕太 撮影/榊 智朗)