第4回 ゆで節炸裂!『キン肉マン』以外のゆでたまご名作劇場

ゆでたまご

『キン肉マン』シリーズだけが
ゆでたまご先生の世界じゃない!

全4回にわたる“『キン肉マン』教室”もいよいよ今回がラスト!…ということで、最後にぜひご案内したいのはあえて『キン肉マン』ではなく、ゆでたまご先生がその他にも多数発表されている他作品の世界観です!
『キン肉マン』でも如何なく発揮されているゆでたまご先生の奇想奇天烈極まりない発想力ですが、これが全く別の世界観で発揮されるとどうなるのか?
妖怪漫画、ロボット漫画、グルメ漫画などなど、主戦場である格闘技漫画以外のジャンルでも、ゆでたまご先生は様々なタイプの作品を発表されてきています。
単発の読切作品まで含めると数が多すぎてキリがなくなってしまうので、ここでは過去の「連載作品」ということに絞って珠玉の以下7作、それぞれご案内していきましょう!

闘将!!拉麺男(たたかえ!!ラーメンマン)

(ジャンプコミックスDIGITAL 全12巻/集英社コミック文庫 全8巻)

『キン肉マン』に登場する超人・ラーメンマンを主人公にしたスピンオフだが、そちらの世界との設定面での繋がりは一切なく、大昔の中国を舞台にした独自の世界観で描かれる硬派拳法ストーリー。1982年よりフレッシュジャンプで連載開始。
平和を願い、弟子の少年シューマイと一緒に行脚の旅に出た“美来斗利偉・拉麺男(ビクトリー・ラーメンマン)”。超人拳法の粋を極めた奥義「超人一〇二芸」をひっさげ、横暴の限りを尽くす山賊や馬賊、さらには悪の組織相手に容赦のない仕置きを加えていく。

ゆうれい小僧がやってきた!

(ジャンプコミックスDIGITAL 全5巻)

1987年に週刊少年ジャンプ誌上で『キン肉マン』連載中に読切が発表され、そのまま次の連載作となった妖怪漫画。主人公は百太郎と琴太郎という双子の兄弟で、合体することで亜鎖亜童子(アーサアどうじ)という強力な正義の妖怪に変身。彼ら自身もまた妖怪でありながら、人間のため本来は同類であるハズの悪の妖怪たちに立ち向かっていく!
人を襲う妖怪の恐怖感を演出するためおどろおどろしい描写も多用されており、前作『キン肉マン』の爽やかさとはかけ離れた感もあるが「特異な力を持つ者が人のために力を尽くす!」という根本にある熱いテーマは変わらない!

SCRAP三太夫

(ジャンプコミックスDIGITAL 全2巻)

『ゆうれい小僧がやってきた!』に続く週刊少年ジャンプでの連載作品は、ゆでたまご先生自らの原点でもあるギャグ漫画! 1989年連載開始。
人格を持ったロボットが人間と共生するようになった近未来。主人公のロボット警官・三太夫はスクラップとバカにされるほどの落ちこぼれだが、唯一の救いは、大昔の柔道の達人が遺したバケツで頭部ができていること。そのおかげで眠れる柔術の才能を秘めており、ドジを繰り返しながらも伝説の柔道家の技を駆使して、悪のロボットに立ち向かう!
連載のクライマックスでは“ロボット繋がり”であのウォーズマンもゲスト出演!?

蹴撃手(キックボクサー)マモル

(ジャンプコミックスDIGITAL 全4巻)

前作『SCRAP三太夫』のギャグから一転して1990年、最大の得意ジャンルである格闘技漫画の世界へと帰ってきたゆでたまご先生。その競技はずばり、キックボクシング!
行方不明になっていた兄を追ってタイに渡った日本の少年・蹴田マモルが、ムエタイの修業を積んで次々と本場の有力者に挑戦していくという、超本格派のバトルストーリーだ。
幻の達人といわれる老師ゼペット・チャンガーから、秘伝の技の数々を授かったマモル。ゆでたまご先生自ら“大半が創作”と語るその独特の修行方法は、ゆでイズム全開!
『キン肉マン』時代からの格闘技路線を期待するファンからも、大きな支持を得た。

トータルファイターK(カオ)

(ジャンプコミックスDIGITAL 全4巻)

史上最強の格闘技「無敵喧嘩躰術」を極める一族の後継者として生まれた捕手(とりで)カオが、世界中の様々な流派の格闘家たちと対戦を重ね、闘いの度に肉体的にも精神的にも大きな成長を遂げていく物語。
連載開始は1993年だが、後に到来する現実世界での異種格闘技戦ブームを先取りするかのような内容は、長年にわたり格闘技に注目してきたゆでたまご先生の先見の明、そしてセンスが詰まっている!
激しい闘いの合間にはギャグシーンも多数盛り込まれており、ゆでたまご先生のあらゆる魅力が堪能できる作品でもある。

ライオンハート

(ジャンプコミックスDIGITAL 全5巻)

『蹴撃手マモル』連載終了後の1991年に週刊少年ジャンプ増刊「Autumn Special」で発表された読切の構想を膨らませ、1993年より他誌で連載開始された異色作。
タイトルの『ライオンハート』とは、悪党がはびこる世界で弱者を守る“最強の戦士”に与えられるという伝説の称号。
その名を継ぐ者を探し求める男が、ひとりの野生児と運命の出会いを果たしたところから物語は始まる。男はシンと名乗るその少年に格闘術を教え込みつつ、悪との闘いを繰り返し、その中でシンを自らの後継者へと成長させていく!
なおストーリー的には何の関連もないが、先代ライオンハートのたたずまいがラーメンマンそっくり。

グルマンくん

(ジャンプコミックスDIGITAL 全4巻)

ゆでたまご先生が趣味だと語る「グルメ」をテーマにした作品。1994年連載開始。
美食界の大御所の孫として生まれた主人公・食井カンロが、奇抜な料理を披露しては学校の仲間たちを日々唸らせていくという話なのだが、圧巻なのは「こんな料理、見たことない!」と驚かずにはいられない、ゆでたまご先生の恐ろしいまでに豊かな発想力!
まるで格闘技を描くかのような激しい調理風景や、インスタントラーメンなど“まさか”の食材を使った信じがたいメニューの連発で、料理漫画の常識を根底から覆す、ゆでたまご先生の魅力=オリジナリティが爆発した傑作である!
「このジェット機、お肉でできているわ…」「バターライスの空港に着陸するぞ!」などなど、おおよそグルメ漫画とは思えないセリフの数々に痺れる!

以上、いかがだったでしょうか!?
常識外れた斜め上の発想力、タブーを平気でぶち破っていくパイオニア感、そして何より“友情・努力・勝利”の安定したテーマなど、ジャンルは多岐に渡れども、ゆでたまご先生のスタンス自体は実は何も変わりません。
『キン肉マン』でゆでワールドにどっぷりハマってしまったなら、次のフロンティアはここにあります。あえて見比べてみることで、ゆでたまご先生が漫画を通して何を伝えようとされているのか…ということがよく見えてくることもあるかと思います。
2016年現在で漫画家生活37年、ゆでたまご先生の衰えを見せないパワーの秘密、これらの過去作をあえて紐解き触れることで、ぜひ体感してみてください!