パチスロ『キン肉マン』シリーズを製造する山佐にも“肉マニア”が!「今の連載がめちゃくちゃ面白いってことを知ってもらう手助けになれればと思ってます!!」

6月14日まで開催されていた「連載40周年記念 キン肉マン×集英社大展示会!!の巻」にて。自前のキン肉マンマスクで登場の宮川氏。業務の都合上、顔出しはNGです

これまで3機種にわたり継続的にパチスロ『キン肉マン』シリーズの製作を手掛けてきた山佐の開発部に、とてつもない肉マニアがいるという。

しかも同社での近年の『キン肉マン』関連プロジェクトはまさにその彼が中枢の一角を担う立場となって進められてきたとのことで、果たしてどんな人物がどんな想いを胸にその仕事を遂行してきたのか。当事者である宮川氏に直接、お会いして話を聞いてみた。

宮川さんは普段から山佐パチスロ機開発セクションの一員としてご活躍されているとのことですが、『キン肉マン』の機種を手掛けられるようになったのは、いつからなんでしょう?

宮川これまで山佐は『キン肉マン』の機種を2008年、12年、17年と3台リリースさせていただいているんですが、僕はその中の2台目、12年に設置された機種の開発途中に山佐に入社しました。

その経緯に関して、実は宮川さんは『キン肉マン』の開発に携わりたいがために、同業他社から転職活動をされてきた…という話を聞いたのですが?

宮川はい、その通りでして、もともとは同じパチスロ業界の別の会社に新卒で入社したんです。ところが、僕がいた会社も『キン肉マン』のパチスロ機を出すことを希望していたのですが、ちょうどその年に他社が手掛けることに決まってしまったんです。

僕は入社したばかりだったのですが、先輩たちがとても悔しそうにしてたのをよく覚えてます。その時に開発権を手に入れたのが山佐で、その成果として作られたのが08年にリリースされた最初の機種でした。

ところがこれが当時としては他に類を見ないほどの大ヒット作になりまして、そうなるとしばらくは続編の機種も山佐が作り続けることになるだろうと。じゃあ『キン肉マン』の仕事がしたいなら、当時の会社を辞めてでも山佐に行くしかない!と一念発起、今に至るという感じです。

わざわざ新卒で入られた会社を辞めてまで!? その『キン肉マン』に対する情熱はやはり子供時代からのものなんでしょうか?

宮川そうですね、まさに子供の頃から大好きな作品だったということに尽きるんですが、さらにそのきっかけとなったのは、そもそも僕が関西出身で熱狂的な阪神タイガースファンだったというところからなんですよ。

それは…阪神タイガースと『キン肉マン』にどんな接点が?

宮川阪神甲子園球場ですね。幼い頃からよく野球観戦で親に連れていってもらってまして、個人的にとても馴染みの深い球場だったんですが、その頃見ていた『キン肉マン』のアニメで、当時甲子園の外野に設置されていたラッキーゾーンで超人が闘うという話があったんです。キューブマン対チエの輪マン、キン肉マン対キングコブラの2試合なんですが。

ありましたね。原作では掛布のホームランがキングコブラに直撃してキン肉マンが勝利を拾うという…(笑)。

宮川ええ、そんな馴染みの深い場所がアニメの舞台になってるっていうのは、それだけで子供心に大興奮でした。しかもそれが面白くてすっかりハマッてしまって、気がついたら阪神タイガースと同じくらい『キン肉マン』という作品のファンになってました。

ちなみに一番、お好きな超人は?

宮川子供の頃からずっとブロッケンJr.ですね。最初は単に技がマネしやすかったから、というのが大きかったと思うんですけど。

確かに「ベルリンの赤い雨」って、威力はともかくポーズだけは誰でもマネできますからね。

宮川他にも「ハンブルグの黒い霧」とか「ゾーリンゲンの鈍色刃(にびいろやいば)」とか、技名が昔から今のシリーズに至るまで全部カッコいいじゃないですか。あんな技名、ゆでたまご先生どうやって考えてるんだろうって、ずっと感激しながら今の連載まで応援し続けてます。

『キン肉マン』愛は誰にも負けない!

ではお好きなエピソードは?

宮川多すぎて悩みますけどひとつ挙げるなら、これもブロッケン絡みでしかも『キン肉マンⅡ世』の話なんですが、ブロッケンJr.が弟子のジェイドにドイツのことわざを語る場面ですね。「ふたりというものはいいものだ。楽しい時は2倍楽しめる…そして苦しい時は半分で済む」。めちゃくちゃいい言葉ですよね!

続編の『キン肉マンⅡ世』まで網羅されてるとはさすがですね。しかしそれほどずっとお好きな作品を、単にファンとして享受する側から、仕事として解釈して仕掛けていく側に回る、というのは難しさもおありなのでは?

宮川そうですね。もちろん私はパチスロも大好きでこの仕事を選んだので、大好きな『キン肉マン』を大好きなパチスロで表現できるというのはこの上なく恵まれた仕事だと思ってますけど、そのふたつを結び付けた時にどこまでそれぞれの魅力を損なわないようにケンカしないように、融合させていけるか。そこは毎回、ものすごく悩むところです。

実際、パチスロ機というのはその性質上、法律が絡んできたり厳しい内規があったりと、非常にルールの制約が多い遊技機なんです。そのルールの中に『キン肉マン』を落としこんでいくというのは、好きであるほど大変な作業になってきますね(笑)。

具体的にはどんな難しさが?

宮川わかりやすいところですと、パチスロ機はリールの絵柄だけでも大きな制約があって、『キン肉マン』には数えきれないほどの魅力的な超人が出てきますが、使える絵柄は10種と決まってます。しかもその形や色にもたくさんの決まりもあり、どういうコンセプトで当てはめていくのがベストなのか。

たとえば17年リリースの第3弾は「夢の超人タッグ編」をテーマに製作した台でしたが、『キン肉マン』でタッグといえばやはりマッスル・ドッキングに代表されるツープラトン攻撃ですよね。それがドカンと炸裂して勝負が決まる瞬間を爽快感のMAXとして、じゃあユーザー目線で考えたとき、ボタンを押してリールを止めるという最初の操作からどうやってそこまで繋げていくか。

山佐のパチスロ『キン肉マン』シリーズは、3機種リリースしている

宮川一例を挙げるとリール絵柄の中にスイカ絵柄というのがありまして、それはロビンマスク&ウォーズマンの超人師弟コンビをモチーフにデザインしたんですが、ただそれで終わりじゃなくて、むしろそこからなんですよね。

じゃあ、スイカ絵柄が何回か連続で揃ったら、液晶の演出も超人師弟コンビが結成されて活躍する確率が高くなるよう設定していく、というパチスロなりのストーリーの持っていき方に繋げていかないと意味がない。その方向性に関しては様々なやり方がある中でどこを取るか、かなり頭を悩ませました。

どうしても当たり外れのある遊技機ですから、キャラクターが豊富なだけにその格付けも難しそうですね?

宮川そこは本当に難しいです。単純に強い超人だと当たりやすくて弱い超人だとハズれやすい、みたいなことでもなくて、なぜなら超人をふたり並べて「さぁ、どっちが強い」っていう問いには明確な答えがない場合の方が圧倒的に多いんですよね。

偏見なしにまんべんなく広いファンに納得してもらえる作りを目指さないといけません。じゃあどうするかというと、たとえばこの超人が出てきたときは当選確率が低いけど、でももしこれで当たったら通常以上に好調な状態がしばらく続きますよ、みたいなバランスの取り方になってきます。

どの超人にも何か光るモノがある?

宮川おそらくゆでたまご先生もそういう思いで作品を描いていらっしゃると思いますから…そういう考えは大切にしたいところです。

他に『キン肉マン』という作品の性質上、ここは特にこだわったというところは?

宮川シリアスとギャグの配分ですね。特に原作では物語が後半に進むほどシリアスなムードが濃くなっていくんですが、『キン肉マン』はもともとギャグから始まった作品だというのを大事にしたかったのと、もうひとつ特にアニメ版では全編通してかなりギャグが散りばめられていた印象も僕の中では強くて、そこはどうしても作品の間口の広さとしてパチスロでも残したいという思いがありました。

それで特別チャンス的な演出で、初期の超人オリンピックの予選競技のようなギャグ色の強いオリジナル競技をいくつか考えて入れ込もうとしてみたり。でもそのさじ加減が難しくて、あまり原作からかけ離れすぎても作品の空気が読めてないということになりますし、社内含め、主に版権元の東映アニメーションさんとの監修会でそこはかなり熱い議論のやり取りがありました。

最終的にはなんとか誰もがおおむね納得の行く形に落としこめたと思ってます。こだわりという点では他にもたくさんありますが、特にそこは時間をかけて議論した分、強く記憶に残ってますね(笑)。

パチスロ『キン肉マン』シリーズのキャラクター集。これらも試行錯誤の上、生まれている

『キン肉マン』への愛とこだわりの強さゆえにぶつかることもあると。

宮川そうですね。でもそれも含めて結局、こだわりという話を突き詰めて行きつくところは最終的にいつも同じで、それは僕を含めたこのプロジェクトに関わるスタッフ全員が『キン肉マン』という作品を本当に面白いと思ってて、その良さをパチスロという別のチャンネルを通してもっと多くの人に知ってもらいたい、という思いに尽きると思います。

特に『キン肉マン』という作品の偉大なところは、今もまだ連載が続いていて新しい話がどんどん作られている現在進行形の作品だという点です。しかも今の話がまた、僕らが子供の頃に熱狂したのと同じくらいのテンションでアツくて面白い。これが何よりすごいことで、その事実を既に作品から離れた昔のファンにも知ってもらいたい。

その上でパチスロユーザーには世代的にもそういう人が多いと思いますから、もし僕らの仕事が新しいきっかけになって、作品がまた今以上にますます盛り上がってくれたら、というのが僕らにとって目指してる大きなところのひとつなのは間違いないです。

それでは最後になりますが、今後の山佐さんの新機種製作予定について…今言える範囲で告知できることはありますか?

宮川そこに関してはちょっと……色々な大人の事情がありまして「肉のカーテン」の如く今は何も言えません!…としか(笑)。

なるほど。でももし機会があればやる気のほどは?

宮川もちろん気持ちだけはめちゃくちゃ持ってます!

わかりました。ではそんな機会が訪れた際には、また熱いお話をお聞かせください。

宮川はい! そんな話が具体的にできる日を誰より、僕が待ち望んでます!

山佐株式会社 公式サイト

協賛 山佐    

(取材・文/山下貴弘 撮影/榊 智朗)